世界からのサプライズ動画とは
InstagramやX(旧Twitter)、TikTokなどのSNSで、謎の外国人がたどたどしい日本語とノリノリのダンスで誕生日や記念日を祝う動画を目にしたことはありませんか。
こちらは「世界からのサプライズ動画」として、複数の外国人ダンサー(アフリカ系の黒人がメイン)が、誕生日や記念日のお祝いメッセージと祝福のダンスを動画内で披露するサービスです。
元々は2015年ごろに中国で発祥した「黒人が中国語でメッセージを送る」というサービスが、やがて各国向けにアレンジされ広まったと言われています。
日本では「世界からのサプライズ動画」と呼ばれることが多いですが、グローバル名は「World Surprise Video」となっており、他にも中国では「非洲祝福」台湾では「非洲客製祝福」アメリカでは「 Unique Wishes」もしくは「Greetings from Africa」と呼ばれています。
また、ヨーロッパでは「Wishes from Africa」韓国では「월드 서프라이즈 영상」オーストラリアでは「Surprise Greetings」スウェーデンでは「Wishes made visual」インドネシアでは「Jastip video ucapan Afpika」など、世界各国で人気を集めているサプライズ動画です。
「ジャにのちゃんねる」に掲載された世界からのサプライズ動画が炎上
2023年5月、嵐の二宮和也さんがリーダーを務めるYouTubeチャンネル「ジャにのちゃんねる(現よにのちゃんねる)」内で「世界からのサプライズ動画」の動画が使用され、一部より「人種差別だ」「搾取されている」「人権侵害にあたるのではないか」などの意見が寄せられました。
二宮和也さんは、チャンネル開設2周年を記念し自費で世界からのサプライズ動画を提供する「MIYABI INTERNATIONAL」に動画制作を依頼しました。
その後、2023年5月21日に投稿された「#237【2周年!!】私財を投げて自分達で祝おうかとなった日」内で世界からのサプライズ動画を通じて制作された動画を公開。動画を今後エンディングで採用するとしていましたが、炎上をしたせいか実際には採用されていません。
ネット上での意見がヒートアップし炎上する中、動画の制作元である「世界からのサプライズ動画」公式X(旧Twitter)アカウントは以下のように投稿しました。
ジャにのちゃんねるの皆様に私たちのサービスを利用していただいたことで各所で炎上をもたらしている件について、私たちからも発信させていただきます。
先ず最初に申し上げたいのは、ジャにのちゃんねるやそのメンバー、延いてはジャニーズ事務所さんたちを批判するのは、著しく筋違いです。彼らは決してアフリカ系の方達を「笑い物にしている」のではありません。
ジャにのの皆さんは純粋な気持ちで、「一見して縁もゆかりも無いと分かるアフリカ系の方々から、自分たちの名前を呼ばれ、陽気なダンスでお祝いされる」というところが「面白い」と感じていらっしゃるのではないでしょうか。
私共のホームページ上でもご案内しておりますが、私たちのサービスは「世界中の人々に笑顔をお届けしたい」をコンセプトに運営されており、搾取や出演強要などの人権問題は一切ございません。
また、アフリカ貧困地域の皆様にご出演いただくことを差別と言う方が一部にいらっしゃいますが、私たちは特にアフリカ系の方々に限って出演をお願いしている訳ではなく、現在ではウクライナやバングラデシュ、エジプトの方々にも動画にご出演いただいております。さらに過去にはロシア、アイルランド、タイ等のアフリカ系以外の撮影チームもございましたが、コロナの影響もあり需要が伸びずに、それらの国の撮影チームは現在活動を停止しております。
私たちのサービスはチャリティの一面もありますが、あくまでも「ビジネス」として行っており、それは撮影チームに於いても同じことです。人気の出なかった撮影チームが淘汰されていくことは自然な事ではないでしょうか。
その結果、現在は人気のあるアフリカ系の方々の撮影チームが多く残っているだけに過ぎません。これはあくまでも私達の見解ですが、私達のサービスを差別的だと言われる方は、私達の動画の出演者に対して「自分の方が優位である」という潜在的な意識をお持ちなのではないでしょうか。
私たちはどの国の撮影チームとも、ビジネスパートナーとしてお互いの事を大切に思い合っております。当然のことながら私達と出演者を含む撮影チームの方々とは、人間として上も下も無くお互いのことを認め合っております。私達のサービスについて様々なご意見がある事は承知しておりますし、それらのご意見やご批判を私達が頂戴する分には全く問題ございません。
しかしどうかその矛先を、私達のサービスを純粋な気持ちでご利用いただき楽しんでいただいたジャにのの皆さんやその関係者、延いてはファンの皆様へ向けることは、くれぐれも慎んでいただきたく、批判をされている皆様にお願い申し上げます。最後になりますが、この様な筋違いの炎上を招いてしまった原因の一つには、私共のHPでご案内している様な「私達のコンプライアンスに対する姿勢」が、世間の皆様に届いていないこともあると存じます。
ジャにのの皆様、関係者の皆様、そしてファンの皆様、ご迷惑をお掛けし本当に申し訳ございません。
この批判を受けて、世界からのサプライズ動画を提供するMIYABI INTERNATIONAL INCは上記のようにコメントし、どの国の出演者も平等に尊重されていることを強調しました。
こうした批判は、特にSNSで広がり、動画のコンセプトや制作意図をめぐって賛否が分かれる結果となりましたが、制作側は意図的な差別はないと強く主張しています。
世界からのサプライズ動画によく出演するアフリカの大多数の人々は十分な収入が得られず、貧しい暮らしを余儀なくされています。
そこで世界からのサプライズ動画では、収益の一部をアフリカの貧困に喘ぐ人々に直接寄付する活動を行っています。
食べ物や水、薬をなど生活に欠かせないものを与える一助になるだけでなく、「日常的に死を意識する事のない、安全で人間的な暮らし」を提供するきっかけにもなると言えるでしょう。
つまり、世界からのサプサイズ動画は決して人種差別や搾取をしているサービスではなく、依頼をすることで貧困にあえぐ人々を救えるSDGsの活動の一つです。
世界からのサプライズ動画の課題・問題点
世界からのサプライズ動画が炎上した背景には、2017年にイギリスのBBC Newsが報じたニュースによる影響も考えられます。
とある業者の世界からのサプライズ動画では子供たちが労働に従事していましたが、彼らには報酬としてスナック菓子や数ドル程度しか与えられておらず、搾取や児童労働などの人権侵害の問題が指摘されました。
しかし、日本国内で世界からのサプライズ動画サービスを展開している企業はどこも成人男性(女性)を起用し、しっかりと報酬を渡しています。
上記のニュース内で、日本国内でも世界からのサプライズ動画サービスを提供しているMIYABI INTERNATIONAL INCの動画が無断で使用されたため炎上しましたが、同社によると「報酬をきちんと支払っており、強制や子どもを不当に雇用している事実はない」とのこと。
海外での悪いニュースの印象が強くなっていますが、日本で展開している企業は現地の人々に労働を強要しているという事実はないようです。
世界からのサプライズ動画で人種差別的な表現を強制し逮捕された事件
過去には世界からのサプライズ動画制作者の卢克(ル・ケ)容疑者が、マラウイでの人種差別と児童搾取の疑惑により、隣国ザンビアで逮捕されました。
彼は世界からのサプライズ動画の依頼を受け、マラウイの子供たちが「おめでとう」などの言葉を言う動画を撮影していましたが、BBCの報道によると、一部の動画には子供たちが中国語で差別的な内容を発言するシーンが含まれていました。
BBCが告発した動画の1つには、マラウイの幼い子供たちが中国語で「僕は黒い怪物。僕のIQは低い」と叫ぶ様子が収められています。
これらの動画は中国のインターネット上で最高70ドル(日本円にして)で販売されており、世界中で波紋を呼びました。
マラウイ当局は捜査を続け、卢克容疑者がザンビアで逮捕され、両国が協力して彼の引き渡しを進めています。中国の外交官も人種差別に対する反対姿勢を示し、今後も違法行為の取り締まりを強化する方針を述べました。
容疑者は、「動画は中国文化を地元コミュニティーに広めるためのもので、軽蔑的な動画は作っていない」と主張していますが、言葉の意味を理解していない子どもを利用し、人種差別を煽るような動画を制作することは決して許されません。
日本で提供されている世界からのサプライズ動画はこの事件を重く受け止め、差別的な要素、政治的なメッセージ、特定の人、物を侮辱するような内容は一切依頼できない規則となっています。
世界からのサプライズ動画=搾取ではなく支援
「世界からのサプライズ動画」は、おもにザンビアやマラウイなどのアフリカ、バングラデシュ、エジプト、ウクライナなどでよく撮影されています。
依頼者が特定の国を選び、その国の人々がメッセージを代読する形式をとっているため、撮影は依頼された国で行われます。グローバルな雰囲気とインパクトを演出でき、視聴者に新鮮なサプライズを届けることが可能です。
世界からのサプライズ動画にアフリカ系の出演者が多い理由は、アメリカやヨーロッパ諸国などから受けた植民地支配の影響が色濃く出ており、独立しても奴隷問題や民族問題から内戦や紛争が勃発し、なかなか国が発展しづらい現状があるからです。
また、アフリカでは今も多くの紛争が起きています。一昔前に比べれば数は減ったものの、深刻化、激化している紛争もあり、罪のない人々が危険に晒されているのが現状です。
さらにアフリカでは、高い失業率や貧困によって窃盗や強盗などの経済的犯罪が問題化しています。
やむを得ない事情から犯罪に走ってしまったアフリカの人々は定職に就くことがさらに難しくなり、仕事を求めて苦労をするといいます。
アフリカに住む彼らの真の願いは「紛争のない平和な世界の実現」。世界からのサプライズ動画の活動を通じて世界中の人々を平和的に笑顔にできるこの仕事に、出演者たちは誇りを持って取り組んでいるそうです。
このことから世界からのサプライズ動画は、定職に就くことが難しく、いつ命の危険に晒されるかわからない人々に「サプライズ動画への出演」という仕事を依頼し報酬を渡すことで、支援をしているとも捉えられます。